連載コラム・neoプレカット工場紀行

第3回「木造建築生産はいま ―情報連携の視点から―」


設計から始まる情報連携 ―建築CADの現状と限界

特定非営利活動法人シーデクセマ評議会 理事長
藤澤 好一

 情報生成の流れは、意匠設計から始まる。まず建築主の求めに応じて平面や立面が描かれ、そこから構造計算、プレカット、資材割付、施工へと下っていく。すべての川上に位置するのが意匠CADだ。ならばここで入力されたデータが、そのまま後工程へ流れれば理想的、と言いたいところだが、話はそう簡単ではない。
 先のパネルセッションで、椿田竜也氏*1)が疑問を呈したのは、評議会が示す連携のチェック項目。通り芯、柱の種別、偏心の設定、横架材の芯座標、金物の情報とあるが、意匠CADはそこまで入力されてないではないか。連携に「過度な期待」をしていないか、という指摘だった。ここには前回も触れた「解像度」ともつながる住宅設計におけるCAD利用の変遷がある。手書き図面をデジタル化する「効率化」の時代から、3次元の建物モデルに情報を統合するBIM時代へ。そして、わが国固有のJw-CADの存在も大きい。
 実際、意匠図の多くは二次元の作図として描かれている。見た目こそ整っていても、内部では「窓が、ただ壁に貼り付いているだけ」ということが少なくない。窓台や窓まぐさが構造材のどこにどう取り付くのか、そうした立体の情報を持っていない。受け取った側は、結局これを一から読み解かねばならず、確認に多くの時間を費やしているのが現状だ。やっかいなのは、意匠CADの入力が「担当者ごとに全然違う」ことだ。同じソフトを使っても、三次元で建物を組み立てる意識があるかないかで、データの中身はまるで変わる。プレカットCAD同士なら加工という共通の目的で揃うが、意匠CADにはその縛りがない。ここに連携の最初の関門がある。
 ではどうするか。一つの手がかりは、サッシなどの三次元カタログ*2)を意匠段階で活用し、開口部まわりの位置情報を自動で持たせることだ。設計者に過大な負担を強いず、連携に必要な最低限の入力を促す。作図の文化を、少しずつ立体の文化へ、そんな期待もないわけではない。PDFをAIで読み取り、3D化・属性化していく流れも今後は強まるだろう。しかし、情報の受け渡しを体系化することそのものが、これからの設計行為なのではないだろうか。



*1)アウェア株式会社取締役・技術本部長、一般社団法人耐震性能見える化協会 理事・普及委員会委員長
*2)サッシの三次元カタログ(BIMオブジェクト)を用いることで、開口部の窓台・窓まぐさ位置を構造情報と連動させる取り組みが検討されている。
*3)2018年設立、本社・名古屋市、京都・東京に拠点。専用の3D建築CADを用い、木造建築の意匠設計、構造計算、省エネ計算、各種申請支援に至る業務を一気通貫で行う一級建築士事務所。住宅から中大規模木造まで幅広く対応し、耐震解析など技術開発にも強みを持つ。(HP:https://aware-c.jp/より)


写真:アウェア株式会社*3)受付