福井県は、幸福度ランキングで総合1位*1)を長年維持している。健康・文化・仕事・生活・教育の分野別指標からの評価だが、生活を支える住宅事情のランクも上位にある。住まいづくりを担う地域の工務店への要望も細やかだという*2)。
プレカット加工実績シェアが県内7割というクラシス株式会社*3)を訪ね、工場を見学した。整然と並ぶ加工機械もさることながら、印象に残ったのはプレカット工場の役割の変化だ。その仕事の中心は、単に「木材を加工すること」から、「加工に必要な情報をつくること」へと移りつつある。
同社の主要顧客は地域の中小工務店約100社。社内で加工データを作成するが、プレカットCADと構造計算ソフトは部分的な連携にとどまり、取引先の多くが使う意匠CADとの連携も十分とはいえない。昨年の建築基準法改正以降は、確認申請前にデータの完成度が求められ、設計サポートの負荷は増す一方だという。
最大の課題は、この情報連携にある。意匠CADと加工CADでは求める情報の精度が異なり、図面上で正しく見えてもそのままでは加工データには使えない。結局、再入力や修正が必要となり、「最初から打った方が早い」事態に陥る。
CEDXMによる連携は、こうした課題を解決する可能性をもつ。だが、標準フォーマットを用意するだけでは足りない。誰がどの段階でどこまで入力し、その情報に誰が責任を持つかというルールづくりが不可欠だ。
クラシスはグループ内で入力精度を高める一方、工務店向けに構造計画セミナーを定期開催し、連携の底上げを図っている。取引先との関係や責任分担の再構築は、経営課題そのものなのだ。
取引先の設計環境が多様な中、当面は人が確認・補正する業務は欠かせない。だが、その過程で培ったチェック体制を標準化し、可能な部分からデータ連携へ移していく。その積み重ねこそが、地域の木造住宅生産を支えるDXへの着実なステップとなるはずだ。
*1)「都道府県幸福度ランキング」(一財)日本総合研究所編、2012年版より2年ごと刊行、2014年版から2024年版まで福井県が連続で総合一位
*2)旧・プレカット木造住宅風土記15「福井県の巻」、住宅と木材、1999年7月
*3)クラシス株式会社 創業:1950年、本社:福井県鯖江市、木材調達からプレカット加工、住宅資材の販売、物流、現場施工まで一貫展開する木造建築のワンストップ企業。地域の中小工務店を中心に生産を支援する。https://crasis.co.jp/
写真 プレカット加工部材に添えられる情報
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なくしたい現場の「ムラ」